大学院ソシオテクノサイエンス研究部に所属する2名の教員および総合技術センター所属の1名の技術職員、大学院先端技術科学教育部建設創造システム工学コースおよび工学部建設工学科の学生によって構成される研究グループを指します。

 物理的に言うところの研究室は、建設工学科棟5階の西ブロックの西側にあり、関連実験室が建設工学科棟1階の東側の実験室と多目的風洞実験室として存在します。

風工学研究室で主に研究対象としているのは、風が関係する工学的な問題です。

風はそよ風程度であれば心地よい存在ですが、台風が襲来したりすると強風に伴って様々な問題を引き起こします。

橋やビルなどの構造物を揺らしてみたり、 家屋を破壊してみたり、高潮を引き起こしたり、自動車や物を飛ばしたり、傘を壊したりと、強い風は悪行の限りを尽くしてくれます。

一方で、風は再利用可能エネルギーとして無限の可能性を秘めていますし、また、日常生活においても風は生活環境を左右する重要なファクターなわけです。

つまるところ、周りを見渡して「風吹くところ、風工学あり」と考えていただけるとよろしいかと思います。それではもう少し詳しい内容について説明してみましょう。

台風は年平均でおよそ27個程度発生し、そのうち11個ほどが日本から300km以内に接近、3個ほどが上陸に至ります。

そして、接近、上陸した台風は、 広範囲にわたって強風(といいますか暴風)をもたらします。

また、台風の接近に伴って竜巻やダウンバーストといった局所的な強風も発生しますし、冬の低気 圧などは台風並みに発達することもあります。

その上、日本は急峻な地形が多いため、地形によってさらに風は強まりますし、都市部では建物の存在によっても 風は強まります。

つまり、日本は、気象的な条件からも地形的な条件からも強風の発生頻度の高い国であるといえます。

風工学研究室では、特に風に対する地形の影響に焦点を当て、以下のような研究を進めています。

  • 上空風の情報を用いた地形因子解析による地上風の推定に関する研究
  • 丘状地形や半島状地形周辺の流れ場に関する研究
  • 複雑地形や建物周辺の流れ場を対象とした数値流体解析に関する研究

 

風工学に関する研究を進めるには、多岐にわたる知識が必要になります。風工学研究室での研究を通じて次のような知識が習得できます。

  • 風を相手にその本質的な性質を理解するための、流体力学的な知識
  • 強風の発生プロセスなどを知るための、気象学的な知識
  • 構造物の動的な挙動を理解するための、動力学(振動学)的な知識
  • ランダムに見える風の秩序を知るための、確率統計学的な知識

また、学問以外に、実験や解析を通じて、電気回路、マイコンやパソコンを利用した計測、統計解析処理などのスキルが身につきます。

強風中で構造物はさまざまな挙動を見せます。写真は1942年にアメリカに架けられたTacoma Narrows Bridgeですが、わずか19m/sという風でねじれフラッターという現象によって崩壊してしまいました。この事故をきっかけに、長大構造物や高層建築 物は、設計段階における空力的不安定性の検討が不可欠であるという認識が広がっていきました。

風によって発生する構造物の振動現象には、主なものとして渦励振、バフェッティング、フラッターがありますが、斜張橋に見られる斜めに張られたケーブル には雨天時に発生するレインバイブレーション、並列ケーブルで発生するウエイクエクサイテーションなども存在します。いずれの振動も、構造物にとっては望 ましいものではなく、Tacoma Narrows Bridgeを崩壊せしめたフラッターのように絶対に発生させてはならないものも存在します。

これらの現象があまり目にされない、つまりマイナーな現象であるかのように認識されることがあるのですが、これは大きな誤解です。設計段階から風に よる問題が起こらないように十分な検討がなされているがゆえに発生しないということであり、風の問題が日常的に起こらないことこそ風工学の成果だといえる のです。

風工学研究室では、風が引き起こす構造物の振動現象を対象に、以下のようなテーマに取り組んでいます。

  • 高欄形状が橋梁の耐風安定性に及ぼす影響に関する研究
  • ウエイクエクサイテーションの発生メカニズムに関する研究
  • バフェッティングの原因となる変動空気力の形成メカニズムに関する研究

また,過去に風工学研究室において耐風安定性を検討した橋梁をこちらでご覧いただけます。

 研究室(旧土木設計学研究室時代を含む)の271名にわたる卒業生名簿から主なジャンル別に就職先をカウントしてみました。
 地方自治体(48)/中央官庁・公団など(10)/大学・高専など(8)/コンサルタント(38)/建設会社(57)/電力・鉄道など(7)/橋梁メーカー(25)/住宅メーカーなど(8)/情報系(6)/大学院在籍者(6)

台風や竜巻、ダウンバーストの発生によって、家屋が損壊するなど、突風が原因の災害がここ数年増えています。

強風災害発生時には、その被災 状況の検証のために現場へ赴き、構造物のダメージの原因を調査し、今後の減災へ生かす努力が欠かせません。また、強風災害を拡大させる飛散物の挙動につい てもその性質をよく知る必要があります。

風工学研究室では、竜巻状流れ場の実験的・数値解析的再現に取り組んでおり、竜巻の流れ場の検討を行っております。また、強風中の飛散物の飛行軌道に関する数値シミュレーションにも取り組んでおり、飛散物の危険性を詳しく評価する方法を構築しています。

さらに、突風下において構造物に作用する非定常空気力の特性についても様々な検討を行っております。

これらの橋梁はいずれも計画段階から風工学研究室において風洞実験を実施し、耐風安定性と対風安定化対策を検討したものです。

弓削大橋(愛媛県)

岩津大橋(徳島県)

 強風時には悪者の風ですが、現在再利用可能なエネルギーの一つとして積極的に利用していこうという動きが盛んです。
 風工学研究室では、設置の容易な中小規模の風車に注目し、その安全性の向上や生産コストの低減を可能とする新しい風力発電装置の開発に取り組んでいま す。この風車の基本形状は直線翼垂直軸風車(ジャイロミル風車)と呼ばれるものですが、開発中の風車には空力的な自律回転制御機構が組み込まれており、如 何に強い風が吹いても必要以上の回転数には原理的にならない性質が備えられています。
 また、過去に自然風を利用した自然換気システムについて検討し、東京アクアラインの川崎人工島に設置された「風の塔」の建設にその成果が生かされました。